蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

三島由紀夫 「金閣寺」

「金閣寺」という呼び名は実は通称で、正式な寺の名前は「鹿苑寺」です。その中にあるあの金色の建物のことを「金閣」というので、いつしか「金閣寺」と呼ばれるようになりました。その「金閣」は国宝に指定されていましたが、昭和25年7月2日に、当時大谷大学の学生で鹿苑寺の見習い僧侶だった林承賢(当時21歳)の放火により焼失してしまいます。この作品はその事件をモチーフにしており、三島由紀夫の独自の解釈で犯行の動機を明らかにしています。この事件に関しては水上勉も「五番町夕霧楼」、「金閣炎上」において作品化していますが、犯行の動機においては三島由紀夫の解釈と異なりますので、読み比べてみるのも面白いと思います。主人公(作品の中では林養賢となっています)は病弱で、生まれながらに重度の吃音がありました。生い立ちに不幸を抱えていた彼にとって、美の象徴である「金閣」はその対極にあって憧れの対象でした。そこに己の美学の究極がありました。一方で自分の現実の世界においては、障害を持ちながらも逆にそれを悪用して強かに生きる友人や、愛欲に溺れる住職、彼に過度の期待を寄せる母親など、周囲の環境に救いを見出せず苦悩します。そして彼はついに究極の美を燃やすことによって、長い時を越えてきた儚い美を自らの手で終わらせることによって、それまで自分にとって憧れでしかなかった究極の美を自分だけのものにしようとします。この物語の舞台は戦後間もない頃の日本で、まだアメリカの占領下にあります。その時代背景と、主人公の年齢が性に対する興味も旺盛な青春時代であることがストーリーの奥行きを深めています。三島由紀夫ならではの極めて美しい文章で綴られており、時代を超えて評価され続けています。海外でもよく読まれており、日本人にとっては誇りといえる名作です。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 | HOME | 

FC2Ad

カテゴリー

ブログ内検索

最近の記事

最新コメント

リンク

このブログをリンクに追加する