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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

芥川龍之介 「藪の中」

よく未解決事件などを表現するのに、”真相は藪の中”といいますが、あれはこの作品からきています。芥川龍之介の傑作「藪の中」は、一つの事実を、それに関係する複数の人間の口から語らせると各々のエゴが介在して少しづつ変化してしまうということをテーマにした、人間の心理の底の暗闇を見せるような非常に面白い作品です。短い話なのでここでストーリーを詳しく説明すると興をそぎますので簡単に。ある男の死体が発見され、真相究明のために関係者が証言します。男と争った若い盗人、男の妻、目撃者などが語る真相はどれも食い違っています。最後は霊能者を通して殺された男が証言します。さて、誰の証言が真実なのか?という内容です。ちょっと推理小説的要素も含んでいます。実はこの作品は『今昔物語集』巻二十九第二十三話を元にしています。古典を題材にして自分なりの物語に変えてしまうのは芥川龍之介の得意技です。そしてこういう複数の人物の証言で構成するという手法は、アメリカの作家アンブローズ・ビアスが「月明かりの道」という作品の中で使っています。当時アンブローズ・ビアスを日本に紹介したのは芥川龍之介なので、おそらくその影響を受けたのではないかと言われています。ちなみに黒澤明の有名な映画「羅生門」は、芥川龍之介の「羅生門」と「藪の中」を合体させたようなストーリーになっています。この作品の真相は読者の判断に任される形で終わりますので、多くの人がこれにチャレンジしました。これまでにたくさんの論文などが発表されています。是非皆さんもこの傑作を読んで、自分なりの結論を出してみて下さい。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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