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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

室生犀星 「或る少女の死まで」

「ふるさとは遠きにありて・・・」でお馴染みの室生犀星ですが、小説も書いています。処女小説が30歳の頃に書いた「幼年時代」で、その続編が「性に目覚める頃」。そしてそのまた続編がこの「或る少女の死まで」ということで、3部作になっています。主人公がまだ若く東京で苦労している頃、隣に住んでいる家族と親しくなります。特に9歳のふじ子ちゃんという女の子とは非常に深い友情で結ばれます。幼い彼女は経済的、精神的に苦しむ作者の心の救世主になります。なんとも清々しいものがあります。こういう美しい心の交流、優しさ、慰め、癒しは、まさに室生犀星の作品の本質に大いに関係する部分です。室生犀星という人は本当に人生そのものがそっくり悲しい物語として成り立つほど、苦労の連続、悲しみの連続でした。「夏の日の匹婦の腹に生まれけり」という歌にあるように、室生犀星は1889年に加賀藩(金沢)で私生児として生まれます。そしてすぐに養子に出され、実の両親の顔すら知りません。人生の始まりがこれですから生まれながらにして悲しみを背負っていたわけです。そして蔑視に耐えながら、また母の面影を慕いながら成長します。そういった背景が作者自身にあるので、いずれの作品にもそれらが投影されており、静かな悲しみを感じずには歌も小説も読めません。神様は室生犀星に文才を与えるだけでなく、人生そのものまで作品になるように導いたのではないかと思ってしまいます。本人はつらかったでしょうけど、作品と生き様を含めた室生犀星の全ては永遠に人の心を揺さぶり続けることだろうと思います。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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