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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

山本有三 「路傍の石」

小説には様々なタイプがありますが、皆さん”教養小説”というものをご存知でしょうか?これはドイツにおいて確立されたスタイルで、主人公が逆境をものともせず様々な経験をしながら成長し、自己形成していく様子を描いていくというものです。ゲーテの「ヴィルヘルム・マイスターの徒弟時代」や、「ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代」がそのはしりと言われています。実在の人物をモデルにしたサクセス・ストーリーなどで今ではよく見かけるスタイルです。日本で言えばこの山本有三の「路傍の石」がその典型的な例です。山本有三は東大でドイツ文学を専攻しており、その影響を強く受けているようです。「路傍の石」はドイツで生まれたこの小説スタイルを参考にして書かれとみて間違いありません。山本有三の小説は、強く生きようとする人間への応援であり、挫折しそうな人への励ましです。人間を、人生を、命を肯定しよりよい人間形成を目的とした作品が多いので、このスタイルがまさにうまくはまっています。この作品の主人公、愛川吾一は没落士族の息子で貧乏な暮らしをしていますが成績優秀です。非常に将来を期待される身でありながら、貧乏は進学を阻み、奉公に出されます。こきつかわれて辛い思いをするばかりの毎日ですが、歯をくいしばり頑張り抜こうします。頑張っても頑張っても次々に襲ってくる試練。それでも頑張り続ける吾一。大正時代の作品ですから吾一と自分が重なるような生活をしている人も当時は多かったことでしょう。おそらく多くの若い人がこの作品に励まされたことだろうと思います。作品によって一人でも多くの人が励ましを得るというのは作家冥利につきるでしょうね。実に素晴らしい作品ですから是非どうぞ。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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