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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

島崎藤村 「夜明け前」

「木曾路はすべて山の中である。あるところは岨づたいに行く崖の道であり、あるところは数十間の深さに臨む木曾川の岸であり、あるところは山の尾をめぐる谷の入り口である。一筋の街道はこの深い森林地帯を貫いていた。」この有名な文章を見たことありませんか?これは島崎藤村の晩年の大作「夜明け前」の書き出しです。芸術的でありながら簡潔。読み手の頭に情景を浮かばせる適確な描写は実に見事です。そんなふうに始まるこの名作は一体どんな話なのでしょうか?簡単に言うと島崎藤村が自分の父親をモデルにして描いた明治維新前後の歴史小説的文学小説です。文字通り日本の”夜明け前”を描いています。幕末から明治を舞台にした歴史小説は山ほどありますが、それらの作品というのはほとんどが歴史上偉大な足跡を残した有名な人が多いですよね。そういった作品を読む時にいつも思うのは、「その頃の庶民の人たちはどういうふうに感じ、行動したのだろう?」ということです。そういった点に着目した作品は意外に少ないですが、この名作はそこをうまくついています。島崎藤村は自分の身近な環境を背景にして、明治を迎える劇的な日本の時代の流れを一般庶民の視線から描こうとしたのではないかと思います。島崎藤村はその溢れんばかりの才能を様々な作品で世に送り出すとともに、様々な苦悩も経験しています。作家として、人として、多くのキャリアを積んだ後に、その集大成であるかのようにこの「夜明け前」に取り組んでいますので、作品の質においては計り知れない水準にあります。まさに日本文学の金字塔的傑作です。正直言ってこれほどの作品が今後の日本の文学界において出てくるとはとても思えません。日本文学への興味の有無関係なしに、日本に生まれたからには是非読んで頂きたい作品です。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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