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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

三島由紀夫 「宴のあと」

今の時代、プライバシーの保護が非常に重要視されるようになりました。人間にとって今や命の次に守るべきものと言ってもいいほどの扱いです。個人情報保護法が施行されてからはそれが更に顕著になってきました。ところで皆さん、この「プライバシー」という言葉がいつ頃から世間一般に使われるようになったかご存知でしょうか?実はそのきっかけを作ったのがこの「宴のあと」なのです。この三島の傑作は元外務大臣の有田八郎をモデルとして書かれたもので、政治の世界の熾烈で陰険なライバル争いを描いています。有田八郎はこれに対し、個人のプライバシーの侵害であるということで三島由紀夫と新潮社を訴えます。”プライバシーの保護”と”表現の自由”は真っ向から対立し、結果は有田八郎に軍配が上がります。これが日本で最初のプライバシーの侵害に関する裁判です。この裁判の後から「プライバシー」という言葉は一般に使われるようになります。そういったいきさつがあってこの作品は余計に注目されることになり、三島の作品の中でも特異な位置を占めることになるわけですが、純粋に作品だけを見ても非常にドラマ性が高く、物語の組立も完璧で展開にリズムもあり、読み手を退屈させない面白さを持っています。政治の世界の話ですからライバルを出し抜くためにあの手この手の攻防戦があり、それをかなりリアルに描いてます。現実の政治の裏側を覗くような感じがします。ちょっと松本清張的な雰囲気もあります。裁判のほうは後に和解していますし、今となっては訴えた方も訴えられた方もともに没して、この作品に関する逸話抜きで楽しめるわけですが、過去にそういうことがあったと知った上で読むのもまた一興というものでしょう。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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