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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

横光利一 「日輪」

川端康成とともに「新感覚派」の旗手として一時代を席捲した横光利一は、えしぇ蔵が個人的に崇拝する作家の一人です。戦後まもなく病死しますが、その葬儀の際、川端康成は弔辞において「君の名に傍えて僕の名の呼ばれる習わしも、かえりみればすでに二十五年を越えた」と読みましたが、これは要するに川端康成が、終始横光利一を超えることはできなかったと自ら認めているわけです。彼はそれほどの偉大なる作家でした。そのすごさの一端を知るには、この作品もまさにうってつけです。舞台は古代の日本、卑弥呼が登場する邪馬台国です。卑弥呼のあまりの美しさに魅了された男たちが、彼女を我が物とするために必要のない戦を始め、お互い血を流します。卑弥呼がいかにして日本を統一し、女性君主となることができたかを大変ドラマティックに描いています。映画や大河ドラマにするにはもってこいの面白さです。この作品では横光利一の作品の特徴がよく現れています。つまり、彼は文学において芸術を追い求めるかのように見えて、実は結構ストーリーも工夫しているということです。これこそまさに彼の、「純文学にして通俗小説、このこと以外に、文藝復興は絶對に有り得ない」という主張を裏付けるところです。いわゆる”純粋小説論”ですね。彼は小説のあり方を追求したという意味でも文学史において大きく貢献しています。ちなみにこの作品は彼がまだ文壇に登場して間もない25歳の頃に書かれています。読まれるとわかりますが、25歳にしてこの完成度は半端じゃありません。構成のしっかりした物語を美しい文章で流れるように描いています。今、20代でここまで書ける日本人はまずいないでしょう。「新感覚派」の旗手の若き頃の実力をご堪能下さい。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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