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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

田山花袋 「蒲団」

日本の文学史を紐解くと、「自然主義文学」という大きな流れがかなり幅をきかせていることに気付くと思います。そもそもこの「自然主義文学」とはなんでしょうか?これが登場するまでの文学というのは事実を題材にすることはあっても基本的には空想の産物で、そうなるとおもしろくするために大なり小なりあらゆるものを美化あるいは誇張して表現してありました。それに対してこのフランス生まれの「自然主義文学」とは、美化せずにありのままを書こうという考え方のもとに生み出されたものです。そしてそれは「私小説」という形で作品化されていきました。その「自然主義文学」のいわば出発点として位置づけられているのがこの田山花袋の「蒲団」です。この作品は田山花袋が実際に弟子の岡田美知代とのいきさつを小説化したもので、まさにあけっぴろげに自分の恥をさらしてありのままを書いています。その時代には前代未聞の試みで、文壇やジャーナリズムは大騒ぎになりました。登場人物名こそ変えていますが、それぞれ誰をモデルにしているかはすぐにわかるわけで、関係者にも当然嫌な思いをさせたことでしょうし、家族や親戚にも迷惑をかけたことでしょう。多くの非難も受けたようですし、当時の一般の読者にはあまり受け入れられなかったようです。それが今では日本文学史の上では欠かすことのできない記念碑的作品として重要な位置を占めています。どんなことでも最初にトライするというのは勇気がいることで、そして評価されるまでは時間がかかるものです。何か新しいものというのは前途に横たわる障害の先にあるものなんですね。偉大なる挑戦の産物を是非読んでみて下さい。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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