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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

大江健三郎 「死者の奢り」

皆さんご存知の通り、1994年ノーベル文学賞受賞者です。この人の存在は文学を蔑ろにする現代の日本において、わずかに残された光であり、最後の誇りです。学生時代からその非凡な才能は大いに発揮され、23歳の頃に「飼育」で第39回芥川賞を受賞します(ちなみにここで紹介する「死者の奢り」は第38回芥川賞の候補作です)。芥川賞とノーベル賞の間にも様々な受賞経験があり、名実ともにもはや孤高の存在です。誰一人否定できない天才です。まだかけだしの頃、ノーベル賞は川端康成か三島由紀夫かという時に、賞を逃した三島に「次は大江君だよ」と言われたエピソードは有名です。そういう次元の違う人が書いたものがいかにすごいか、まずはこの作品で確かめてみて下さい。ほんの数行読むだけでゾクゾクするほど恐ろしい才能を感じるのは間違いありません。作品の発想自体も非常にユニークです。学生である主人公がアルバイトをする話なんですが、そのアルバイトというのが病院の地下にある死体処理室で死体を扱うというもので、暗く陰湿な雰囲気が見事に表現されており、不気味さは半端じゃありません。解剖実験用の死体がアルコールのプールの中でお互いからみあいながらぷかぷかと浮いてるわけです。それを一体づつ運搬するなんて考えただけでもぞっとしますよね。その運搬にかかわる三人の登場人物の心理を通して、死とは何かを考えさせられます。死を見つめさせることにより、読者に生きることの意味を考えさせます。場面が見事に描かれているがためにリアルすぎて、好き嫌いが分かれる作品かもしれませんが、生々しい表現というのも彼の持ち味の一つで独特の世界を築いています。うならせるほど見事な文章で奇抜な題材を描く天才の作品に是非触れてみて下さい。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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