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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

森村誠一 「ミッドウェイ」

歴史好きでなくとも、ミリタリーおたくでなくとも、ミッドウェイという場所で起きた戦闘が太平洋戦争における大きな転換点となったことをご存じの方は多いと思います。非常に劇的な展開となり、アメリカにとっては勝利への転換点、日本にとっては敗北への転換点となりました。意味深くドラマティックなこの戦いをテーマにした作品は数限りなく世に出ました。ドキュメンタリーもかなりの数に上ります。そんな中でひときわ存在感を放つのが、澤地久枝の「蒼海よ眠れ」と森村誠一の「ミッドウェイ」ではないかと個人的に思っています。澤地久枝の場合はドキュメンタリーですが、森村誠一の場合は小説です。でもストーリーを含んではいますが、ミッドウェイ海戦に至る日米両国の政治・軍事的な展開、軍人たちの訓練の様子、庶民の生活の様子など徹底的に調べている点ではもはやドキュメンタリーの域に入っています。特筆すべきは日本海軍の士官候補生を育てた江田島の海軍兵学校の様子です。入学した主人公の目を通してかなり詳細に描かれており、非常に興味深いものがあります。一方でドラマという面でも優れていることは、読み始めるとなかなか止められないことでも証明されています。この作品は日米どちらかに偏った視点では描かれていません。面白いことに日本側とアメリカ側で2人主人公がいます。それぞれが海軍のパイロットとして交替で登場し物語が進んでいきますが、徐々にその距離が縮まり、ついにミッドウェイの海の上で対戦するという展開となります。果たして2人の対決はどうなるのか?この2人は運命のいたずらで同じ女性を愛することになりますが、それが作品に色を添えています。ドキュメンタリーとしても、ドラマとしても傑作といえます。大作でかなり長いですがそれを感じさせない面白さです。森村誠一の力量を見せつけられます。若者の夢も愛も奪う戦争の悲劇をリアルに描いたドラマとして読んでおくべき傑作ではないかと思います。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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