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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

大岡昇平 「花影」

女性を描くことが巧みな男性作家は決まって大家です。逆に言えば女性をうまく描けることが文豪と呼ばれるために必要な要素なのかもしれません。永井荷風しかり。太宰治しかり。そして忘れてはならないのが大岡昇平です。なぜそこまで深く女性の心理を理解できるのか、そしてそれを巧みに表現できるのか、不思議で仕方ないです。この作品などは、もし作家の名前を知らずに読んだとすれば、誰しもきっと女流作家の作品に違いないと思うことでしょう。それほど女性の思いを代弁している作品です。文章も美しく、どことなくしっとりした感じがあってこれまた女流作家のようです。ただストーリーを追うだけではもったいない名文です。ストーリーは戦後の人心荒廃し、世情混沌とした社会の中で寂しく生きる女性の儚い生涯を描いています。戦後の女性たちは、甲斐性のある男性に嫁いだ人は別ですが、そうでない人は生きる糧を得るために自らの美を売り物にしていくしか術がなく、多くの人は風俗業やバーなどの水商売にたずさわりました。バーで働いてるうちにお金持ちの”旦那”を見つけ、家を買ってもらったりお店を持たせてもらったりすれば成功したことになりますが、それはごく一部であり、ほとんどはそのまま年齢を重ね、自分の容姿の衰えにおびえながら細々と生きていくしかありません。主人公も何度か頼れそうな男性を見つけますが、毎回落胆させられます。多くの男性にただ翻弄されるだけで、ついには希望を見失います。追い求めた幸せをつかむことができずに最後の手段を選ぶ悲しい人生が淡々と描かれています。抑揚のない描き方が薄幸の女性の虚しい生き様をよりリアルに感じさせます。作品自体の価値が高いのはもちろん、こういう人生を送った女性が戦後は多かったということを知る上でもいい作品だと思います。男女問わず読んで頂きたいです。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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