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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

国木田独歩 「武蔵野」

自然を描写するというのはいわば作家の力量を試すところではないでしょうか?その表現の仕方で読む人の頭の中に深呼吸したくなるような高原や荒々しい乾いた砂漠を創り出すことができるわけですからね。この「武蔵野」を読めばあなたの頭の中には見たことないはずの遠い昔の武蔵野の大自然が、今では幻となった武蔵野の美しさが再現されることでしょう。彼の美しい文章はそれを容易にさせます。いつのまにかあなたは武蔵野の自然の中を歩いています。草木を踏む音も川のせせらぎも鳥の声も聞こえてくるはずです。降り注ぐ日差しも心地よい木陰も感じることでしょう。美しい花や木々の梢を目にすることでしょう。いわば文章で自然鑑賞をするような感覚です。国木田独歩の底力を思い知らされるという感じです。読み進んでいくと何か似た作品があったなと気付きました。二葉亭四迷が訳した「あいびき」です。自然の描写がよく似ているので調べてみたら、案の定この作品に影響を受けていました。文学史において彼の代表作として必ず名前が上がる作品ですが、発表当時はあまり評価されませんでした。芸術作品というのは受け入れる世間のバイオリズムとタイミングが合わないと、どんなに優れていても見過ごされますが、本物ならば必ずいつかは評価される時代がくるものです。この作品にはこれといってストーリー展開はありません。その辺は予め知っておいたほうがよろしいかなと。いくら待っても何も事件は起こりませんから。ただ美しい文章に触れて美しい自然を思い描く。そんな本の楽しみ方もあっていいと思いますよ。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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