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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

遠藤周作 「イエスの生涯」

遠藤周作にとってキリスト教は生涯のテーマですのでキリスト教に関連した作品はたくさんありますが、その中核をなすものといえるのがこの「イエスの生涯」、そしてその続編ともいえる「キリストの誕生」ではないかと思います。キリスト教というのはどうしても日本人の思考や生活になじみにくい部分があります。受け入れにくい民族性であるのかもしれません。遠藤周作も最初からどっぷりキリスト教に染まったわけではありません。どうもしっくりこないものを自分なりに考え悩みぬいて、答えを必死に探し続けたというのが本当のところです。(遠藤周作自身はこのことを、自分に合わない洋服を着せられたが、それを自分に合う和服にする作業だったと言っています)。だからこそ、クリスチャンとそうでない人の間の橋渡しとして、どちらにも共感を生む作品を残すことができたのではないかと思います。また、作品を通してあからさまにイエスを信じろ、クリスチャンになれ、と言っているわけではなく、ある種第三者的な視点から描いていることも特徴です。この作品も決してクリスチャンのため、あるいは教会がキリスト教の布教に使うため、という役目を感じさせるものではありません。あくまでクリスチャンが信じるイエスとはどんな人間だったのか?どんなことをしたのか?なぜ2000年以上も多くの人に影響を与え続けてきたのか、という一つの研究テーマとして徹底的に調査し、冷静に分析しています。この作品での視点こそまさに遠藤周作的であると言えます。クリスチャンはもちろん、いかなる宗教の人であろうと面白く読めるものとなっています。そこで何を感じるかは個人の自由ですし、その余地を残したことが遠藤周作のスタンスであり、絶妙な技でもあると思います。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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