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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

吉村昭 「零式戦闘機」

いろんな国の民族性と比較して、日本人というのは本当に真面目だなと思うことがよくあります。どんな分野においても、何を成し遂げるにおいても、次々に立ちふさがる困難をみんなで知恵を出し合って努力に努力を重ねて、そして最終的にはそれらをクリアして大きな結果を得る。こういうパターンはよく見られますよね。特に高度経済成長期の産業界において多かったと思います。そういう民族的な特徴というのはおそらくかなり昔から引き継がれてきたのではないかと思います。長い日本の歴史においてそれが顕著に表れた時期は昭和初期の日中戦争から太平洋戦争までの時期ではないかと思います。例えばこの本のタイトルである零式戦闘機を生み出す過程においては日本人の底力が発揮された典型的な例ではないかと思います。日本が外国に頼らず完全に自国内の技術によって軍用機を製作したのは昭和11年の九十六式艦上戦闘機が最初でした。世界の航空業界にデビューしたその新人がいきなりトップクラスの性能を発揮します。そこまでに至る技術者たちの苦労は並大抵のものではありませんでした。ところが海軍は更に高性能なものを作ることを要求します。そこから更なる苦難の過程を経て生まれるのが零式戦闘機です。上から無茶を言ってくる、それをみんなで助け合ってクリアする、するともっと難しい無茶を言ってくる、それをなんとかクリアする、この繰り替えしによって日本の航空技術は短期間に飛躍的に成長しました。この作品は明治四十三年に外国の飛行機を軍が初飛行させてから九十六式艦上戦闘機、零式戦闘機の誕生、そして帝国陸海軍の命運とともに零式戦闘機が歴史から姿を消していくまでの詳細な過程が描かれています。しみじみ日本人の真面目さ、ひたむきさを感じる内容です。ここでは戦争という忌避すべき方面においてそれが生かされることになりましたが、日本人の根底にあるこの長所は別の面に置いてこの先の未来も引き継いでいくべきだと強く思います。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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