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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

松本清張 「空の城」

1975年に起こった「安宅産業」の経営破綻をご存知でしょうか?ご年配の方は覚えていらっしゃることでしょう。これは非常に衝撃的な出来事でした。「安宅産業」というのは当時日本において三井、三菱、住友、伊藤忠などの錚々たる10大商社の中に名前を連ねていたほどの一大総合商社でした。それが石油業界への参入に失敗したことをきっかけに巨額の負債を抱えて破綻してしまったわけですからそれは大騒ぎになりました。こんな大きな企業が潰れてしまったらそれに派生した連鎖倒産によって日本の経済に大きな打撃を与えるということで、国を挙げてその事態に対処し、ようやく最後は伊藤忠への吸収合併という形で決着がつきました。この一連のすったもんだを松本清張が綿密に取材して、企業名や個人名だけを架空のものに替えただけで、内容はほぼ実際に起こったことそのままに小説にしたのがこの作品です。松本清張はこういった事件や事故のドキュメンタリー的な作品においてはその驚くべき取材力と豊富な知識で読者を圧倒させますが、この作品においても石油精製工場における精油のしくみ、社主の趣味である中国、朝鮮の陶磁器などの説明においてそれを発揮します。あまりに詳細に渡るのでついていくのに大変な部分があるほどです。この作品は一大商社の崩壊までのプロセスを克明に記したものにすぎず、脚色的なドラマがない(必要ないほど面白い)ので、企業というものがいかに倒産していくかを知ることができます。各々は自分の仕事をしているだけでそこに悪意も何も介在しないのに、ちょっとした見込み違い、不運の重なりなどによって大変な事態を引き起こしてしまうというビジネスの世界の実情を学ぶには大いに参考になる作品です。実際に商社マンにはよく読まれている作品だそうです。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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