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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

木山捷平 「子におくる手紙」

この作品は非常にユーモラスな構成になっています。田舎の父親から上京した息子への手紙を、時間をおって並べているだけで、その手紙に関するコメントも、関係する人物や背景などの説明も一切ありません。従って手紙の内容だけで、どういうことが起こってどういうふうに進行しているのかを推測しなければなりません。しかも息子からの返信は一切出て来ません。これまた父親の文章から、その前に息子からどんな手紙が来たのかを推測しなければなりません。こういうふうに書くとちょっと読み解くのが難しそうですがそんなことは全くありません。父親の手紙だけで全てがありありとわかります。田舎の実家は貧乏で父親は必死で働いて生活費を工面しています。だから息子には早くいい仕事についてもらって、少しでも実家の家計を助けて欲しいという思いが父親にはあります。ところが息子はせっかく決まった勤め先を首になったり、ずぼらな生活をしながら文学の道を模索したりと一向に落ち着く気配がありません。父親の手紙は時には怒り、時には許し、時には心配しており、息子への愛が感情の起伏によって巧みに表現されています。作品全体に父親の大きな愛情を感じます。この作品は実際に木山捷平宛に父親から送られてきた手紙をもとに書かれています。つまり父親の言うことを聞かず、文学の夢を追いかけて勝手に上京しているのは木山捷平その人なんです。そういう背景を予め知って読むのもまた木山捷平の若かりし頃の姿が浮かんで面白いかもしれません。太宰治など、当時の作家たちにも絶賛された名作です。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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