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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

吉川英治 「新・平家物語」

吉川英治の超大作です。古典の「平家物語」を基本とした上に、「保元物語」「平治物語」「義経記」「玉葉」「吾妻鏡」「源平盛衰記」などの作品の内容も取り込んでより大きなスケールで平安時代の騒乱を描いています。期間としては平清盛の若年期から源頼朝の死までの約70年間に渡っています。連載は7年に及んだそうです。この作品は一言で言えばとにかく痛快無比。面白さでは群を抜いています。吉川英治の「三国志」を読んだことがある方は吉川英治の作品の面白さがどういうものかお分かりだと思いますが、とにかく読み始めてしまったが最後、今日はここでやめようということができません。(ちなみにえしぇ蔵は吉川英治の「三国志」全巻を3回読みました。)あの感覚がこの作品でも味わうことができます。70年間という長い時間の中で様々な出来事が次から次に起こります。平清盛を主人公にして始まるものの、途中で何度も主人公は交替します。従って様々な目線で同じ時代を見ることができます。天下の覇権を握った者の目線から、一介の貧しい医者の目線まで、上下の角度も様々です。勇ましくも残酷な戦の世界だけでなく、雅な恋愛の情景もあり、陰湿な政治の駆け引きもあり、バラエティに富んだ内容になっています。だからこの平安時代の騒乱の一時期がどういう世情であったかが的確に理解できます。大別すると平家と源氏の争いということになりますが、どちらが正義でどちらが悪という描き方ではなく、また誰が悪くてそうなったということにも言及していません。多少は後白河院の謀略好きのせいで多くの武将が不要な争いの前に尊い命を失ったように描かれている部分はありますが、全体的には各々が各々の立場で時代に翻弄されて生きてそして死んでいったというふうに客観的に描いてあるので後味の悪さがありません。そこに吉川英治の当時の人間を見る優しい目線があるように思います。歴史というのは勝者によって都合よく書き換えられるものですが、この作品は源平合戦を、そして平安時代の一時期を知るには非常にいい参考になるのではないかと思います。やはり何事も客観的に眺めなければ真実は見えてきませんよね。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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