蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

宮尾登美子 「天璋院篤姫」

実はこの作品は宮尾登美子初の歴史小説なんですが、とても初めてとは思えない完成度です。宮尾登美子の作品というのはこれに限らず実に仕事が完璧でそつがないというイメージがあります。事前の調査・取材が細かく深くなされていて、それをもとに明朗でテンポのよい文章で物事がきちっと表現されています。読む側にとっては非常に読みやすく、わかりやすく、好感をもって迎えられるわけです。おそらく人間的にもきちんとした方ではないかなと拝察します。そういう作家が歴史小説を書けば、こんなに素晴らしいものが出来上がるわけです。また、題材として取り上げた人物が天璋院篤姫というのも興味深いところです。天璋院篤姫は薩摩藩主島津斉彬の養女で、第13代将軍徳川家定の正室だった人です。初めは斉彬の謀略の道具として徳川家に送りこまれます。持ち前の判断力と度胸で様々な難局を乗り越えつつ徐々に周囲の尊敬を集めていきますが、やがては幕末の動乱に巻き込まれ徳川家の最期を看取るというつらい立場に至ります。波乱の生涯を強く生きた女性で、幕末の混乱期において重要な役割を果たしたにも関らず、歴史上の人物としてそれほど取り上げられないことにおそらく宮尾登美子自身、強く不満に思ったから筆をとったのではないかと思います。揺らぐことのない強い信念にそって行動する女性という意味で、宮尾登美子と天璋院篤姫の両者のイメージがえしぇ蔵の中では重なります。歴史を動かして来たのは男だけではない、その影には常に苦しみに耐える女の姿があったことを決して忘れないで欲しいと強く訴えられた一冊でした。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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