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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

谷崎潤一郎 「蓼喰う虫」

さぁ、大御所の妖しい世界へご招待。谷崎潤一郎の作品の中には耽美的、官能的なものが多いのは周知のとおりですが、彼の場合それが人間の深層心理に絡んでいるので単なるエロ小説のそれとは一線を画しています。そしてそこに彼お得意の美意識が盛り込まれて、芸術となっているわけです。谷崎潤一郎ファンがその作品に魅了される理由の一つとして、彼の描く官能の世界が多面的で深いということがあげられるのではないかと思います。この作品のストーリーは、ある夫婦が性的な不調和からお互い了解のもとに浮気をするというもので、そこには憎しみがあるわけではなく、うまくいかないお互いへの諦めがあります。そして労わりあう情があります。世間体もあるし、親戚一同への言い訳の面倒さもあるしで、二人は表面的には夫婦であることを続けますが、実際はそれぞれ好きなように行動し、いづれ来る別れの時を待ちます。いわゆる仮面の夫婦ですね。今では実際にそういう夫婦も多いので、小説のネタとして珍しくもなんともないし、また現代でこのネタで書いても実にありふれたエロ小説に落ちる危険性もあるので評価される作品に仕上げるのは難しいでしょうけど、彼の場合は発表された時代的にも衝撃的な内容ではあるし、そこに描かれる情景の美しさや会話の見事さに大御所ならではの力量が発揮されているので文学史上に名を残す名作となったのではないかと思います。妖しくも芸術的な谷崎ワールドを体感するには持ってこいの1冊です。同系列の「卍」や「痴人の愛」などもあわせて読むことをオススメします。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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