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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

安部公房 「他人の顔」

皆さんご存知の安部公房です。それにしてもこの人の脳細胞はどういうしくみになっていたのでしょうか?どこからああいう創造性に富んだ摩訶不思議な発想が生まれてくるのでしょうか?きっと常人にはない思考回路があったのではないでしょうか?「砂の女」、「箱男」、「壁」・・・代表作はどれも他に類を見ない独自の世界です。安部公房は戦後を代表する作家の中の一人ですが、彼の作品は確かに明治・大正では有りえないタイプのものですので、ある意味昭和の日本文学の一つの形と言ってもいいと思います。作品の独自性を確立した一つの要因は科学です。東京帝国大学医学部出身ですから理系の知識は抜群です。彼の作品にはその豊富な科学的知識が大いに生かされています。今でこそ科学的な要素を含む作品はざらにありますが、戦後間もない頃には大きな反響を呼んだわけです。この「他人の顔」の中においても背景にあるのは科学です。主人公は実験中の失敗で顔に怪我をしますが、これが二目と見られないほどのケロイドとなります。顔に包帯をして生活する毎日は次第に主人公の内面を圧迫していきます。(このへんの描写は実際にハンディキャップを負う人の心理を研究したのか非常に真に迫っています。)思いつめた主人公は自らの科学の知識を生かして人口皮膚を作ることに着手します。つまり仮面を作るわけです。街の中でであった一人の男性をモデルにして仮面を作ることに成功した彼はそれを被って別人としての生活を楽しみ始めます。これで彼の苦悩もいくぶん解決して物語は終わりというわけにはいかないのが安部公房です。彼はなんと他人になった顔で自分の奥さんを誘惑します。自分であることがバレないかを試したと同時に、奥さんの貞操も試したわけです。そこに生じる複雑な心境に新たな苦悩が生じて彼は更に苦しみます。さて、奥さんは誘惑に乗るのでしょうか?仮面であることはバレるのでしょうか?予想がつかない結末も安部公房の魅力の一つです。もうこれは読むしかないでしょ?

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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