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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

有島武郎 「小さき者へ」

「不幸なそして同時に幸福なお前たちの父と母との祝福を胸にしめて人の世の旅に登れ。前途は遠い。そして暗い。然し恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける。行け。勇んで。小さき者よ」この名文を読んだだけでもなんとなく作品の尊さが伝わってきませんか?奥さんに死なれた有島武郎がまだ小さい子どものために残した作品です。涙なしには読めません。本当に読みながら涙ぼろぼろ出てきます。子どもは3人いましたが、3人ともまだ幼くて状況を把握できないので、ことの次第をいづれ成人した子どもたちが見る時のために書き残したものといった形式になっています。これを書いた時点で、自分が自殺することを前提としていたかどうかはもちろんわかりませんが(おそらくまだそれはなかったと推測しますが)、子どもたちが成人するまでに自分もこの世にはいないかもしれないということを考慮にいれて、こと細かに報告するように書いてあります。長男が生まれる時の顛末、母親の発病、療養、そして最後の別れ・・・そういったことが書き記されています。最後は子どもたちに病気がうつらないようにすることと、子どもの清い心に残酷な死の姿を見せたくないという理由で、母親が臨終の時も子どもには会わないと血の涙を流しつつこらえたというくだりは涙で文面がかすみます。そして母親の残した句「子を思う親の心は日の光世より世を照る大きさに似て」で悲しみはピークに達します。最後は子どもたちへ人生を歩んで行く上でのアドバイスを書いています。そこに最初に紹介した箇所があります。親子の絆が希薄になりつつある現代において、親の愛の深さ、大きさ、強さを教えてくれるこの名作は是非読まれるべきではないかと思います。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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