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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

円地文子 「小町変相」

円地文子の文章は個人的に非常に惹かれるものがあります。美しくて品があり、わかりやすくてかつ知性が香っている、とでも表現しましょうか。単に美しいだけだと文章は平面的なものになります。正面から見ると魅了されるけど、ちょっと角度を変えてみると何も見えない、うわべだけの美しさになります。それをぐっと深いものにするのは知性と熱意です。この点においては円地文子はまさにお手本のような人です。とにかく作品で取り上げたテーマに関する徹底した調査、そこに築き上げられた磐石の知識、それがしっかりと根をはっているので、その枝に華麗に咲き誇る花を安心して楽しむことができます。しかもその美しさには知性はあっても難解さはありません。ここが見事なところです。知的な文章はどうしても難解さを伴ってしまうものですが、彼女の場合は読み手にあまり負担をかけません。その上で更に上品さを醸し出しているわけですから、多くの人が魅了されるのも不思議ではありません。”安定した実力”というものを感じさせる作家の中の一人です。この作品はある老齢の女優が小野小町を舞台で演じるまでのいきさつを描いたものです。老齢に到っても日本の美人の代名詞である小野小町を演じることができるか?女優としてのプライドを描く一面で、その脚本を書くことになる人物の、長年に渡るその女優に対する恋愛感情が作品にいかに花開くか、そういったドラマが展開されます。途中、小野小町に関する論文のような箇所があり、円地文子の歴史的、文学的知識の恐ろしいほどの深さをまざまざと見せつけられます。作品という形を装って自らの小野小町論を展開しているかのような印象を受けます。この辺が作品に深みを持たせている一つの要因だと思います。単なる人間ドラマに終わらない、広くて深い作品です。実に見事です。脱帽のほかありません。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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