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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

岡本かの子 「鶴は病みき」

岡本かの子のブレイクのきっかけとなった作品です。大正12年の関東大震災があった頃、岡本かの子は家族とともに鎌倉に避暑のための宿を求めてしばらくそこに滞在します。そこは他の避暑客と棟を分けて共同で住む形式のものでしたが、その相客がなんと芥川龍之介でした。(作品の中での名前は麻川荘之介となっています。)これは実話を元にしています。なんという偶然!当時既に芥川龍之介は時代の寵児ですから、今で言えば自分が滞在した宿の隣の部屋に大江健三郎がいた、みたいな感じでしょうか?当時は日本文学史の中でも次々とスーパースターが誕生していた黄金期ですので、大物作家同士が友人であったり、先輩後輩であったり、師匠と弟子であったりして、お互いがからむ作品というのは多いです。主人公(岡本かの子自身)はこの鎌倉での生活において芥川龍之介とその仲間たちと親しく交わりを持ちます。最初はやはり大物作家ということで敬意を持って仰ぎ見るという感じですが、時間がたつにつれて徐々に芥川龍之介の別の一面、(あるいは本当の姿)を垣間見ることになります。日常のなにげない動きの中に表現されるその人の姿というのは、まさに社会に接する時のための仮面をはずしているわけで、すぐ近くにいてそれを毎日見ているとその人物の真の姿というのが嫌でも見えてくるというのは有り得ることだと思います。人が自分のことをどう言っているのか気になって神経質になる彼、くだらないことにこだわって大騒ぎする彼、相手を論難した後で罪悪感に悩む彼・・・非常に人間くさい生の芥川龍之介が描かれており、興味深い作品となっています。芥川龍之介ファンの人も是非どうぞ。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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