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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

丹羽文雄 「蛇と鳩」

丹羽文雄の作品の中にはしばしば宗教がからんできます。これはいわば彼にとっては宿命と言ってもいいかもしれません。もともと三重県にある浄土真宗専修寺高田派の崇顕寺の跡取りとして生まれた彼は、人生のスタートから宗教を背負っていました。仏の道へ入ること、家を継ぐことを拒否し、文学の世界に入って大成功するわけですが、最期まで作品の中に宗教の反映があったというのは彼にとってなにか大きなものを意味するような気がします。この作品は戦後の国土も人心も荒廃した日本において、雨後の筍のように次々に出現した新興宗教をテーマにしています。乱れた人心が心の安寧を求める時代には決まって新興宗教が活発になりますが、太平洋戦争が終わった後の昭和20年代がまさにそれでした。その中には人心を救うというよりも、新たなビジネスと考えて立ち上げたものもあると思います。この作品の主人公の義兄が狙ったのがそれでした。新しい新興宗教を作って大儲けしてやろうという壮大で邪悪な計画を立てた義兄は、主人公を手下として使って手伝わせます。まずは既存のあらゆる宗教を調べて、教祖になるのにふさわしい男を捜させます。その過程が非常に興味深いものがあります。実際に丹羽文雄があらゆる宗教について細かく調べたことがよくわかります。やがて主人公は一人の男を見つけ出します。義兄はその男に教祖の地位を与え、必要な環境を整え、宣伝に莫大な費用を投じ、サクラを使った巧妙な勧誘作戦も展開して一大新興宗教を築きあげます。主人公はその邪悪な計画が身を結ぶ一歩手前において、その所業の非道さに気付き反攻する決意をします。さぁこの偽の宗教団体はどうなるのでしょうか・・・?宗教という重荷を背負って生きた丹羽文雄がその運命と真っ向から取り組んだ傑作です。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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