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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

今東光 「お吟さま」

この人は人生そのものが小説みたいな人です。この世に生を受けて思い切り走りまわり、いろんな経験を経て僧になり人生の何たるかを悟るというわけですから誰かの作品の筋書きになりそうでしょ?若い頃は問題児で学校を追い出されています。問題児と言っても今では誰も問題にしないような単なる恋愛で放校されてしまうわけですが、当時にしては刺激が強すぎたのでしょうね。最初は画家を目指しますが、谷崎潤一郎の秘書をしたり、川端康成と知り合ったりしたことがきっかけで文学の方に進み、同人にも参加して活動してたわけですが、ある時「文芸春秋」に載った記事に憤慨して抗議をしたことから徐々に文壇から疎外され、ついには離れていきます。そしてなんと出家です。比叡山延暦寺での修行を経て、大阪の天台院の住持となり、最終的には大僧正にまでなります。天台院にいる頃にまた小説を書くようになります。そしてこの「お吟さま」がなんといきなり直木賞を受賞したことから見事文壇に返り咲きです。受賞した時の言葉は有名です。「直木には金を貸してたんだがこれでチャラだな」。かっこいいでしょ?その後は名作をどんどん世に送り出します。ところがそれでもまだ終わらない型破り人生は、参議院に自民党から立候補して当選するという展開を見せます。なんだか凡人とは違うスケールを持った人でして、調べれば調べるほどその大きさが伝わってきます。「週間プレイボーイ」で連載された「極道辻説法」ではあらゆる読者の質問に歯に衣着せずズバズバと答えて人気を博しました。直木賞を受賞したこの作品は、千利休の養女お吟の悲しい運命を描いています。お吟は密かに高山右近に想いを寄せていましたが、好きでもない男のもとへ嫁がされます。それでも募る想いは抑え難く、密かに逢瀬を重ねますが、秀吉によるキリシタン弾圧のために高山右近も悲劇の波にさらわれ、ついにお吟は最期の決断をせまられます……。悲しい物語ですが時代考証がしっかりしており、内容の濃い無駄のない構成で一気に読ませてくれます。作者は豪快ですが、作品は実に繊細です。その生き様からはちょっと想像できないかもしれません。そういうところにもこの人の人間性の奥深さを感じるように思います。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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