蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

野上弥生子 「海神丸」

女流文学の歴史をひもとくと、その背骨として長い期間どっしりと構えている大きな存在があります。それが大御所中の大御所、野上弥生子です。この人のイメージは何事にも動じない貫禄抜きには語れません。文壇がいろんな派に分かれて、やれこっちが主流だの、こっちが本当だのと競い合うのをよそに、自分の文学を静かにゆっくり熟成させていったという感じを受けます。その姿勢を保ったまま実に99年もの長寿を保ちます。女流文学史の背骨と言いたくなるのもわかるでしょ?この作品は初期の頃のもので、大正11年9月に発表されました。彼女の代表作として必ず名前が上がる作品です。運送船が嵐にあい遭難する話で、今ではよくある”人間の極限状態における異常な行動”をテーマにした作品です。実際に似たような体験をした人から聞いた話をもとにしているそうですが、それにしても女性の筆によってこういう内容のものをまだ経験も浅い頃にさらさらと書いてしまうところに天性の才能を感じずにはいられません。しかもこういうきわどい内容の場合は、情景の描写が細かいほどリアル感が出るのでそれによって読者は緊張しますが、野上弥生子の筆によればリアル感はもちろんのこと、そこにどこか美しさをも感じるのは、彼女独自の才能のあらわれではないでしょうか?漂流が続けば食糧がなくなる、極限状態まで追い込まれ、正常な判断ができなくなった人間のどうしてもいきつくところ、それはカニバリズムです。小さな船の上で凄惨な騒ぎが起こります。女流作家には珍しくちょっときつい内容ですが果たして野上弥生子はどういう結末にするのでしょう??

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 | HOME | 

FC2Ad

カテゴリー

ブログ内検索

最近の記事

最新コメント

リンク

このブログをリンクに追加する