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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

島崎藤村 「破戒」

この作品の紹介文を書くために今えしぇ蔵は座りなおして背筋を伸ばしました。日本の文学の発展に大きく貢献した偉大なる名作ですから、島崎藤村に対する最大限の敬意を表す意味でそうしました。今回はそれぐらい思い入れが入っています。えしぇ蔵的にはこの偉大なる作品を3つのポイントを上げてご紹介しようと思います。1つめはこの作品が日本における自然主義文学の幕開けを告げた作品であるということ。自然主義文学はフランスで19世紀末にエミール・ゾラから始まった文学運動で、現実を観察し、いっさいの美化を排してありのままに描くというものです。日本の文学界においてこの手法で書かれた作品の先駆けが田山花袋の「蒲団」とこの「破戒」でした。日本の自然主義文学の旗頭として後世に与えた影響は計り知れません。2つめは被差別部落の問題を取り上げたこと。日本においては昔からタブー視されるこの問題に真正面から取り組み、堂々と社会に対して問題提起しました。その勇気は尊敬に値します。島崎藤村本人は家柄のいい裕福な家に育っていながらこの問題に取り組んだわけですから、問題提起によって注意・変革を促すという作家としての強い義務感が彼を動かしたものと思われます。ただ、この作品における被差別部落の問題の捉え方には賛否両論ありまして、発表後にかなりもめます。簡単に言うと主人公は被差別部落出身ということを告白し、恥じてどこかへ去って行くという結末に対し、「なぜ恥じる必要があるのか?」という意見が出て来たわけです。部落開放運動を展開していた「全国水平社」は、一時はこの作品が逆に差別を助長するのではないか?という見方になっていましたが、後にはやはり啓発の意味では必要な作品だという見方に変わったりと、その評価は時期によっていろいろ変わりました。この点は読んで頂いて個別に判断して頂きたいところです。3つめは小説のお手本にしばしば引用されるほどの美しい文章です。全体に彼の作品の文章は美しいですが、特にこの作品の「蓮花寺では下宿を兼ねた・・・」で始まる冒頭部分は名文中の名文です。以上3つのポイントを上げましたが、要するにこの名作はあらゆる角度から魅力を発しているということを言いたいのです。日本文学史に燦然と輝く記念碑的名作です。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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