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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

岩野泡鳴 「放浪」

岩野泡鳴のいわゆる五部作と言われる中の三番目にあたる作品です。五部作とは、「発展」・「毒薬を飲む女」・「放浪」・「段橋」・「憑き物」のことを指し、この作品は「毒薬を飲む女」の続編ということになります。家族も愛人もほったらかしにして蟹の缶詰工場を作るという事業のために北海道からさらに樺太へと渡ったのはいいけど思うような結果を得ることができず、何か新規巻き返しの策を練るために樺太から北海道へ戻り、さてどうしよう?と途方にくれているところから話が始まります。友人知人の家に居候しながらいろいろな策を練り、根回しをするわけですがどれも実りません。そのうちに工場のほうもダメになっていきます。そんな状況でもしっかり色町には遊びに行くわけで、そこである芸者といい関係になります。東京に奥さんと子どもを残し、愛人も残し、それなのに北海道までまたこのざまです。そしてそれを包み隠さず書いてしまうこの人も度胸あるなぁと変なところで感心してしまいます。小市民的一文学者のばたばたと人生にあえいでいる姿を描いた作品です。文学的なテクニックにおいては五部作のどれもそうですが、彼お得意の三人称一元描写で描かれています。これは簡単に言うと三人称で書くのに、作者が代弁するのは主人公の気持ちだけで他の人の心情は表現しないというもので、要するに三人称でありながら独白のような形式です。この表現方法を確立したということで彼の名は永久に文学史から消えることはありません。そんなすごい人なんですが、どうもビジネスにおいては才能がなかったようですね。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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