蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

徳冨蘆花 「思出の記」

えしぇ蔵も趣味で小説を書きます。その際に文体で大きく影響を受けたのは壇一雄ですが、他にも参考にしたい、こういう文体で書いてみたいと思った作家は何人かいます。そのうちの一人が徳冨蘆花です。この人は本当に知的で美しい文章を書く人です。その徳冨蘆花ですが、どういう作家でどういう作品を書いたのか、ちょっと調べてみようという時、おそらく多くの人は代表作で当時は大変なブームになった「不如帰」から読むことでしょう。えしぇ蔵も「不如帰」大好きです。しかし本当に徳冨蘆花の魅力を知ろうと思えば、それだけではなく必ずこの「思出の記」も読むべきです。この作品の中にはこの人の魅力がぎっしりつまっていますし、その特徴も如実に現れています。そして彼の実力のすごさを十分に知ることもできます。内容は主人公の菊池慎太郎の幼い頃から社会に出てある程度名をなすまでの、いわば立身出世的物語です。とにかく描写が細かい上に、長い物語なのに構成がしっかりしているのでえしぇ蔵はてっきり自伝小説だろうと思っていましたがそうではありません。多少の参考はあるでしょうが基本的に全て想像の産物です。裕福な家に生まれながらすぐに家は没落し、幼少の頃から苦労多き毎日を過ごす主人公は、家の復興のために勉学に励み、次々に襲い来る障害を乗り越えてたくましく生きていきます。そうなると最後は偉業を成し遂げるとか、大人物になるとか、そういう華々しい結末が待っているものですがこの作品の場合、立派に社会の中で尊敬を集めるだけの人物になり、平和な一家を築くという、より現実的な結末を用意しています。このへんも評価される一つの理由かもしれません。そして全体を通してとにかく知的で美しい文章に満たされています。冒頭にも書きましたが私が最も魅了された点であり、それ故に一番オススメする点です。長い物語ですがずっとその中に浸っていたいと思うくらいです。あらゆる意味で徳冨蘆花の魅力満載の作品ですから、是非「不如帰」の後にはこの作品をどうぞ。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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