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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

井上靖 「天平の甍」

井上靖お得意の中国大陸を舞台にした歴史ものです。遣唐使の時代の話で、日本の四人の若い修行増がより深く仏の教えを極めるために遣唐使の一行に混じって海の向こうの唐へと向かいます。大志を抱いて上陸した彼らを待ち受けていたのは日本とは桁違いの自然や文化を持った国でした。そこで四人はそれぞれ異なる影響を受け、それぞれの信じる道を歩みます。そのうちの二人(栄叡、普照)は唐の国の優れた僧を伴って帰国することが日本の仏教の繁栄のためになると信じ、鑑真のもとに交渉に行きます。鑑真は自ら海を渡ることに決め、二人とともに準備し船で出発しますが、何度も何度も失敗します。ろくな船のない時代ですから海を渡るのは命がけです。成功率も高くありません。何度も失敗して挫折を経験する間に何年もの時間が経過しますが、最後はついに彼らは海を渡ることに成功し鑑真は日本に上陸します。そこまでの苦労がなんともドラマチックで、希望を捨てない主人公の姿に感動します。井上靖の中国大陸を舞台にした作品に共通する、あの広大な土地に砂埃が舞う風景描写の匠さは、古き異国の浪漫を与えてくれます。この物語は展開を面白くしようとして登場人物が何度も苦難にあうわけではありません。実際に鑑真は日本への渡航に5回も失敗しています。5回ですよ!それでも諦めないその強い意志こそ余人には不可能な大事を成す原動力なのでしょうね。学校の受験とか資格の試験などに何回まで失敗しても諦めないでいられますか?3回も駄目だったら結構落ち込みますよね。鑑真が6回目までモチベーションが下がらなかったということは、そこには大きな使命感があったからではないかと推測します。つまり日本の僧が戒律(僧が守るべき規律のようなもの)を日本に伝えて欲しいと懇願したその情熱に動かされ、自分が日本へ行くことは課された使命であると思ったことがモチベーションの維持につながったのではないでしょうか。鑑真が日本に来て以来、それまで不完全であった日本の仏教はしっかりとした形を持つに至りますので、その強い意志は大きな結果を生んだことになります。途方もなく人物が大きいと言いますか、全くすごい人もいたもんです。鑑真という人を知るにもこの物語は大いに参考になります。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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