蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

芝木好子 「慕情の旅」

心に傷を持つ女性が世間の荒波にもまれながらも強く生きていこうとする姿を描くことは、芝木好子の得意技といっていいかもしれません。彼女の描く女性の強さは、どちらかというと”静かな強さ”です。じっと耐えて弱さを表に出さず、むしろより静かな品のある女性となることでつらさや悲しみを乗り越えていくという感じです。これって芝木好子の人間性なんでしょうか?もしそうなら一目会いたかったです。きっと人間的に素晴らしい人だったろうなと思います。この作品の主人公は、結婚の約束をしていた男性が、結婚式を目前にして主人公の義理の妹と駆け落ちしてしまったという経験を持っています。大きな傷を生涯の伴侶と思っていた人と自分の妹からもらったわけです。しかも父親は孫に会いたさに主人公に気兼ねしてこっそりと妹の新居を訪問してたりするわけで、それが余計に彼女につらい思いをさせます。ですが彼女はそれにもめげず、父親の会社の副社長として仕事に打ち込むことで強く生きていこうとします。そんな彼女にある人が妹夫婦の娘を見たいかと訊きます。見たくないような見てみたいような、複雑な気持ちを抱きますが結局彼女は見てみることにします。そして京都の銀閣寺でその女の子の姿を見た彼女はある大胆な行動に出ます・・・。短編ですが内容は濃く、展開もドラマティックでうまくまとまっています。上品な筆致でありながら、主人公の、その課された苦難に耐えて生きる内側の強さがしっかりと表現されており、そこに作家としての不動の実力が示されているのではないかと思います。芝木好子の魅力を凝縮したような小品です。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 | HOME | 

FC2Ad

カテゴリー

ブログ内検索

最近の記事

最新コメント

リンク

このブログをリンクに追加する