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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

尾崎一雄 「暢気眼鏡」

尾崎一雄は私小説(心境小説)作家で、物書きでありながら一所懸命書くわけではなし、かといって他の仕事をするでもなし、だから必然的に貧乏でおまけに病弱、家族には苦労をかけっぱなし……という私小説作家によくありがちのパターンの人で、そんな生き様をそのまま描いたような作品が多いです。日常生活で思ったことをつらつらと書いていく感じなので、今の時代に発表するとエッセイに分類されてしまうかもしれません。文章は極めて読みやすく、ストレスを感じません。志賀直哉の弟子で、その文章スタイルを大いに参考にしていますから、読みやすさは師匠譲りと言えるでしょう。この作品は、貧乏なのにあせることのない主人公と、それに同化してしまうこれまた暢気な奥さんの話です。そのまんま尾崎一雄と奥さんの話なんですが、奥さんの人物描写が非常に的確にその人間性をとらえており、ありありとその微笑ましい人柄をイメージできます。その描き方の中に尾崎一雄の奥さんへの愛情が感じられて、心温まるものがあります。暢気な二人の暢気な生活は、貧乏もそっちのけでささやかな幸せを形づくっていきます。なんともユーモラスで微笑ましい夫婦の物語です。物は考えようと言いますが、同じ貧乏でもこの二人のように暢気にとらえることができるならば、不幸の要素にはなり得ないのでしょう。見習うべき部分もあるかもしれません。この作品を含めた短編集「暢気眼鏡」は第5回芥川賞を受賞しました。是非他の短編も読んでみて下さい。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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