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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

菊池寛 「藤十郎の恋」

この作品の主人公は元禄の頃に実在した歌舞伎役者の坂田藤十郎です。この人は歌舞伎の歴史においては欠かすことの出来ない存在です。「上方歌舞伎の始祖」とまで言われています。いわゆる恋愛をテーマとした”傾城買い狂言”というものを確立させた人です。男が女を口説く場面を非常理リアルに演じて評判になり、当時の花形スターとなります。この作品は坂田藤十郎が、いかにしてそういう男女の甘い場面をうまく演じれるかと悩んだ末に一つのアイディアが浮かび、それを実行して見事に演技の真髄をつかみますが、その後に悲劇を生んでしまうという話です。菊池寛もいい素材を見つけたなと思いました。藤十郎が実行したアイディアとはなんでしょうか?そもそも彼を悩ませた演技というのは普通の恋愛ものではなく、人妻との許されぬ恋愛でした。”密夫(みそかお)の狂言”と表現されています。要するに間男ですね。経験がない彼には大きな難題でした。そんな彼の前に一人の美しい人妻が登場します。その美貌を見た彼の耳元で悪魔がささやいてしまいます。わからないなら体験すればいい!そして彼はその人妻を熱心に口説いて、ついにその気にさせてしまいますが、人妻の心中に火がついたその刹那に彼は去って行きます。間男の心境を知った彼にはその先は必要ないわけです。憐れなのはもてあそばれた人妻です。これ以上ないほどの辱めを受けたと感じた彼女はある決断をします・・・なんとも非情な話です。この話から”藤十郎の恋”という表現は、芸を磨くための偽りの恋を意味するようになりました。芸人は芸を磨くためにはどんなことでもし、どんな犠牲もはらうというわけです。凄まじいまでの役者根性です。一人の女性の犠牲によって新しい歌舞伎の世界を切り開いた男のサクセスストーリーは深い悲しみも伴っています。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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