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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

宮尾登美子 「鬼龍院花子の生涯」

人生において大変な苦労を経験していないといい小説が書けないということはないと思いますが、苦労をした人が書くものには自ずと重みと説得力があるのは否定できない事実だと思います。ましてや宮尾登美子のように壮絶とも表現すべき波乱万丈な人生なら、その作品に重厚感が増していくのもうなづけます。では宮尾登美子はどんな生い立ちを経てきたか、簡単にご説明します。まず生まれは高知です。父親は芸妓や娼妓を紹介する仕事、いわゆる”女衒(ぜげん)”でした。荒くれどもの多い世界を渡り歩く必要があるので、父親もそれなりに地元では顔のきく人でした。つまり宮尾登美子はそういう荒っぽい世界の中で育ったわけです。そして結婚して満州に渡りますが、そこでご存知の敗戦の憂き目。乞食のようになって命からがら帰国します。(そんなこんなの波乱万丈は作品で読むことができますので是非どうぞ。)いくつもの試練を乗り越えながら強さを身につけ、多くのことを学ばれたわけです。ですからやはり作品に説得力が増すのは頷けます。この作品も自分の体験をベースに創作された作品ですが本当にリアルで迫力があって話の中に引きずり込まれていきます。それだけでもすごいのに、構成はきっちりと卒がなく、表現は流れるように美しいわけですから完璧といってもいいほどの完成度です。ストーリーはいわゆるやくざの家の栄枯盛衰を描いています。そう聞くとちょっとどぎつい作品かなと思われがちですが、女流作家特有の繊細で優しい文章だと抵抗なく読むことができます。この作品にはある種、エンターテイメント性があります。つまり読み手をぐっとひきつける面白さがあります。五社秀雄監督によって映画化されましたが、確かに映画にしたくなる作品です。とにかく面白いですから是非ご一読下さい。ちなみに五社秀雄監督の映画の中で、夏目雅子が啖呵を切って「なめたらあかんぜよ」と叫ぶシーンがありますが、これは原作にはないセリフですのであしからず。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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