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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

壺井栄 「二十四の瞳」

壷井栄は1925年に壷井繁治と結婚します。そして二人の子どもを育てますが、二人とも血縁の兄弟の遺児であり、出産の経験はありません。体質的には子どもに恵まれませんでしたが、こうして遺児を引き取って立派に育てあげたことから推察しても、子どもという存在が好きであったことがうかがわれます。それはおそらく母親から受け継いだものかもしれません。(彼女の母親は11人もの子どもを産みますが、それでもまだ二人も他人の孤児を引き取って育てています。)母親という立場から子どもへと注ぎたい愛情が彼女の内側に満ち溢れていたのだろうと思います。その証拠に彼女の作品にしばしば見られるテーマは”母親の愛情”です。「母のない子と子のない母と 」はその顕著な例です。彼女の名前を不動のものにした大ヒット作のこの「二十四の瞳」もある意味母親の文学です。舞台は昭和初期の小豆島。小さな村の小さな小学校に赴任してきた大石先生と、12人の子どもたちとのふれあいを美しい小豆島の自然を背景に描いています。先生と生徒という関係ではありますが、視点としては子どもを見守る母親のものとなっています。優しく愛情いっぱいに育てた子どもたちが、戦争という悲劇によって運命を左右されていきます。それぞれの子どもたちの行く末を案じる大石先生の視線は完全に母親のものとなっています。つまりはここで表現されているのは子どもに対する大いなる母親の愛情であって、そしてそれを阻もうとする戦争に対する静かなる反抗なのです。暖かい愛情を持った優しい母親、そして子どもを守ろうとする強い母親が見事に描かれています。壷井栄の世界はまさに愛です。「二十四の瞳」は本当に人の心を優しく包み込んでくれる傑作です。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

コメント

Re: 感動しました

コメントありがとうございます。
壷井栄の作品は母親の愛情にあふれています。
是非、ほかの作品も読んでみて下さい。

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