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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

中野重治 「村の家」

昭和初期のプロレタリア文学全盛期の頃には、その流れにのる作家がたくさんいたわけですが、ではその流れが生み出した数々の作品が質的に良いものかどうかという問題になると、?マークがつくのは否定できません。ある意味仕方のないことかもしれません。左翼的なメッセージを強く押し出そうとするあまり、文学的な配慮やストーリー性にあまり注意がいかなかったのかもしれません。実際、この頃登場したプロレタリア文学の作品は今ではあまり注目されません。ですがここに中野重治ありです。彼の作品はプロレタリア文学に分類されるものであっても、しっかり文学作品です。詩的であり、叙情的です。プロレタリア?左翼主義?……今では言葉の意味すらピンとこない人が多いと思いますが、そういう人にも面白く読める文学性の高い作品です。政治云々の前提知識などいりませんので普通の文学作品のように読んで下さい。この作品は革命運動のために投獄された主人公が、もう左翼的な思想は捨てて一切活動はしませんと官憲に誓う、いわゆる”転向”をすることによって釈放された後の、なんとも悲しいような情けないようなつらい心境を描いている非常に素晴らしい傑作です。中野重治の実際の経験を元に書かれています。革命戦士が革命と引き替えに自分の自由を得ることへの罪悪感、一緒に戦った同志や社会に対する罪悪感が見事に表現されています。挫折を経験した革命戦士の芸術に触れてみませんか?

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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