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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

永井荷風 「ふらんす物語」

読み終わった後もいつも手元に置いて、気が向いたらぱらぱらとめくってみたい作品というのがいくつかあります。この「ふらんす物語」もその中の一冊です。面白いし、短編の連作形式で読みやすいし、それに文章が美しいのは言うに及ばず、そしてどこか親しみが持てる名作だからです。フランスが舞台なわけですからフランスに行ったのかと思いますよね?確かに行ってます。彼はアメリカとフランスに行ってます。明治時代にですよ?その時代にどうしてそんなすごいことが?そう。おぼっちゃまなのです。父親は高級官僚です。遊学のために行かせてくれたわけです。行った先で正金銀行に勤めたりしていますので、言ってみれば海外駐在員みたいな生活をしていたわけです。要するにエリートなのです。父親としてはいろいろ勉強して修行を積んで、帰ってきたら立派な実業家になってくれるものと思っていたわけですが、逆に海外で受けた刺激から新たな文学の形を追い求め、日本に戻ってからはせっせと文学活動することになるわけで、父親としては期待が外れてがっかりしたでしょうが、これだけ日本文学史に燦然と輝く超大物作家となって、後世の作家に多大の影響を与えたわけですから、洋行は大当たりだったと言っていいのではないでしょうか?どういう経験で生きる道を見つけるかって予測できないものですからね。ところで不思議なことにこの名作は当時発禁になっています。その理由は当時のおかみが明らかにするわけがないので今となっては神のみぞ知ることですが、様々な説があります。あまりに日本の外交官をだらしなく描いているから、現地の晩餐会での日本人の様子をリアルに描きすぎているから、外国の女性との色っぽいシーンが描かれているから・・・などなど。どの説も発禁にするほどかなという程度のものですが、当局が外国との関係でピリピリしていた時代ですからちょっと厳しくしたのかもしれません。ただそういうすったもんだがあったせいで今ではその幻の発禁版が超がつくお宝となっています。埼玉県の「さいたま文学館」で本物を見ることができるそうです。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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