蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

松本清張 「日本の黒い霧」

松本清張のどういう点がすごいかというと、文章力や創造力もさることながら、やはり取材力ではないかと個人的には思います。北九州市小倉にある松本清張記念館の「書庫」には彼が調べ物のために集めた本がありますが、その数はなんと3万冊です。それだけでちょっとした図書館という感じです。自分の足で各地を歩きまわり、たくさんの人にあって話を聞き、いろんな本を参考にして調べに調べあげた上、最後に自分の意見を加味して書くというのが彼のスタイルなので、非常に作品に説得力があります。絶対の自信が感じられるのです。きちんとした取材をしているからこそ、作品に奥行が生まれるのです。例えば同じ社会派の推理物の中でも面白さのみを追求して作品自体は軽いイメージを抱かせるものが多々ありますが、彼の作品にはずっしりとした重みと深い奥行があるのは彼の作品を読んだことある人なら誰しも感じたことだろうと思います。これは他を圧倒する取材力の賜物だと思います。その取材力のすごさを特に強く感じるのがこの作品です。日本にかつて起こった難事件を自分なりに調査しなおして、自分なりの推理を組み立て、結論を出しています。本当に細かく調べてありますから非常に説得力があります。「下山事件」「造船疑獄」「帝銀事件」「松川事件」などに正面から取り組んでいます。しかしここで扱っている事件というのは”難事件”というよりも、”解決してはいけない事件”というほうがふさわしいかと思います。つまり解決されると困るという人たちがたくさんいるのではないかと思ってしまう事件ばかりなのです。だからこの作品を発表することはある意味命がけと言っても過言ではないのです。おそらく実際に圧力がかかったのではないかと推測します。それでも屈することなく様々な問題を世に問う姿勢には完全に脱帽です。日々世に起こる事件の中には関係する個人や団体を守るために、故意に真実が明かされないまま過去に葬り去られるものが少なくないということをこの作品から学びました。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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