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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

石原慎太郎 「太陽の季節」

今の人は政治家としてこの人を知る人が多いかもしれませんが、最初は作家として世に出ました。その華々しいデビューのきっかけになったこの作品は、昭和31年に芥川賞を受賞しましたが、その内容によって日本中に大センセーションを巻き起こしました。不良の主人公が盛り場で知り合った女性と肉体関係を持ちます。女性のほうは恋愛感情を持ちますが、主人公は次第にそれを煩く感じるようになり、女性に興味を持っていた兄に売ってしまいます。その後、女性が妊娠していることがわかり、中絶手術を受けますが腹膜炎を併発して女性は死んでしまいます。主人公はその女性の葬式の場で驚くような行動に出ます・・・当時としては非常にショッキングな内容で、倫理性に欠けるということでかなり非難もされました。でも一方では若い世代に大歓迎され、太陽族という流行語まで誕生しました。そして作品は弟(石原裕次郎)を主演に映画化され大ヒットします。この人の髪型は”慎太郎刈り”と呼ばれ当時の若者の間でブームになりました。文学史上においてメディアを通してスターになった最初の作家と言われています。今読んでもその過激な内容や卓越した文章力には圧倒されます。荒削りの若さが迸る感じがします。非常に熱いエネルギーがあります。この作品の真価について、当時の文壇の重鎮たちも二手に分かれて大論争になりました。それくらい日本中を騒がせた名作です。後世において昭和という時代を研究する際に必ず必要になるであろう作品です。今の東京都知事として知られる石原慎太郎にも、その当時のエネルギーが残っているかのような活躍ぶりです。この人の政治にかける熱い想いや行動力というのは、この作品のエネルギーに原点があるのではないかと思います。小説という世界におさまりきれず、生き方においても何かを表現しようとする作家もいますが、この人は間違いなくその中の一人に挙げられるのではないかと思います。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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