蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

壇一雄 「火宅の人」

最後の無頼派、壇一雄。その才能は太宰治と並び賞され、同時代の両鬼才と言われました。その実力のほどはこの作品を読むだけでも十分に感じることができます。とにかく圧倒的な文章力です。他の追随を許さない、次元の違うすごさがあります。だがしかし!この作品の内容に関しては賛否両論というところでしょう。主人公は壇一雄本人なんですがとにかくひどいというものではありません。まさに放蕩無頼の限りを尽くします。家には奥さんと、障害を持った寝たきりの子どもを含めて何人も子どもがいるというのに愛人を作って家族を捨てます。気が向いた時、あるいは用事がある時だけ家に帰ります。奥さんは泣かせる、子どもは悲しませる、周囲の人には迷惑をかける、あげくは愛人に暴力をふるって傷つける、旅に出れば行く先々で女を作る、酒は毎日浴びるように飲む、あっちにもこっちにも家を持ってさて今日はどこへ帰るか?どの女を抱くか?そんなだらしない日々を送っています。目の前にいたら一発殴りたくなるようないい加減な男なわけです。見事なまでの自我の開放と賞賛する人もいますが、そこはどうなんでしょうか?確かに芸術は安穏平和な状態からは傑作が生まれにくいと言います。だから敢えて地獄に踏み込んでいく作家もいます。どん底にいることで見えてくる何かを探すというのは芸術家の一つの姿勢として認めるべきものだとは思います。ですがこれほど周囲の人を傷つけるというのはなんとも釈然としないものがあります。己の人間性の評価よりも作品の昇華を求めた結果ということなのでしょう。考えてみれば優れた芸術家が同時に優れた夫であり父親であったという例はあまり多くないようです。所詮は矛盾することなのかもしれませんね。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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