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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

河野多恵子 「背誓」

昔つきあってた男が犯罪を犯してしまい、主人公の女性はその証人として裁判所に出頭します。もう何年も前に別れた男のことなど思い出すことすらないのに今更いろいろ聞かれるのも・・・という心境で証言台に立つわけですが、その男との出会いから別れまで、検事に根堀葉堀聞かれていくうちにいつしか昔の自分に戻っていき最後は・・・みたいな、主人公の心理の変化を繊細に描いてある作品です。緊張感みなぎる法廷の様子が伝わってきて、自分も傍聴席で主人公の発言を聞いているような感じがします。証言台で主人公の女性の心理がどんどん過去に戻っていく描写は本当に息をのむようなスリルも手伝って非常に素晴らしいものでした。女性の心理をこれほど的確に細かく、そしてリアルに描けるところは河野多恵子の河野多恵子たるところではないでしょうか?是非読んで頂きたいわけですが、ただ一つ注意しないといけないことがあります。この作品がよかったからといって、他の作品をいろいろと読む場合には多かれ少なかれ、また良きにつけ悪しきにつけ、かなりのギャップを感じるということです。本来河野多恵子の作品の世界というのはかなりエロティックです。それもロマンティックとは言い難い、異常性愛がメインです。お子ちゃまにはお勧めできないようなけっこうどぎついものがあります。そんな快楽を追い求める世界もあるのかと驚くほどです。河野多恵子はとにかく谷崎潤一郎にあこがれてこの道に入り、「谷崎文学と肯定の欲望」「谷崎文学の愉しみ」などの作品も書いていますし、谷崎潤一郎賞選考委員もつとめていますし、その作風に大きく影響され引き継いでいる部分が多々ありますので、性愛に関して深く突き進んでいった結果のことだと思います。ですからこの作品などはむしろ「あれ?これも河野多恵子?」という感じですのでそこはくれぐれもご注意下さい。ただ、本来の河野多恵子ワールドもそれはそれではまってしまうとなかなか抜け出せないものがあります。ご興味があればそちらもどうぞ。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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