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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

丹羽文雄 「海戦」

丹羽文雄は太平洋戦争中の昭和17年8月に第8艦隊の旗艦「鳥海」に海軍報道班員として乗り込みます。戦線の記録を残すためによくカメラマンが同行しますが、彼は小説家として同行(当時は佐藤春夫、火野葦平、久米正雄、山岡荘八、海音寺潮五郎など、多くの作家が報道班員として従軍しています。)し、自分の体験を記録して作品化します。それが中央公論に発表されて大絶賛されます。決戦におもむく一人ひとりの心理描写も、砲撃しあう時の臨場感も、おそらく当時の人を夢中にしたでしょう。ここで描かれているのは第1次ソロモン海戦で、結果は日本側の一方的勝利に終わります。(日本海軍はアメリカとオーストラリアの連絡路を断つために、ソロモン諸島の中に基地を作る必要がありました。そこで選ばれた島が、多くの戦病死者を出したあの悲劇の舞台、ガダルカナル島です。連合軍との間でその争奪戦が始まった当初、海上において初めて大規模な戦闘となったのがこの第1次ソロモン海戦です。この時は大勝でしたが、最終的にはガダルカナル島は奪われ、日本軍は撤退します。ここから連合軍の北上と日本軍の連敗が始まります。)当時の日本人にとっては非常に痛快な作品になりましたが、でもよく読むと底辺に「戦争の悲しさ」が密かに表現されているのを感じることができます。単なる記録文学ではなく、当時の人たちが心の奥底にひた隠しに隠していた平和へのあこがれを、彼が巧みに掘り起こそうとしたのではないかと勝手に推測しています。彼がいた場所のすぐ近くが被弾し、彼は怪我をしますが助かります。しかし一緒にいた人数名が一瞬にして死ぬのを目撃します。彼は死というものを目の当たりにし、何か非常に強いものを感じますが、当時の時勢ではストレートに表現しにくかったのでしょう。自分の思いを隠しながら書いているような感じを受けます。彼はこの記録で本当は何を言いたかったのか?是非読んであなたなりに探ってみて下さい。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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