蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

葛西善蔵 「湖畔手記 」

若い頃は私生活がだらしなかった作家の私小説的作品を読むと、主人公に対して憤りを覚えたものでした。私小説なのでストーリーはほぼそのまま作家の人生だったりするわけですが、この作家が自分の友人だったら絶対に許さないなんて思いながら読んだものでした。今思えば若かったんでしょうね。人間すべてまっすぐに生きるべき、そうでない人間とは距離を置くべき、みたいな信念をまだ持っていたんでしょうね。歳を重ねると人生というものは様々な要因の複合体であり、他人の人生や生き方を批判するなどは自己中心的価値観の押しつけにすぎないということに気付きました。まして作家の人生とその作品を一つにして評価するべきではなく、芸術とは須く作品そのものを独立したものとして評価すべきということも学びました。荒んだ生活の中で書かれたものには傑作が多いというのは文学の世界ではよくある話です。また作品のために敢えてその境地に自分を置くという作家も少なくありません。ですから文学作品と向かい合う際には一種の作法のようなものがあるのかなと思っています。今ではこの作品も主人公に憤ることなく、芸術として楽しむことができるようになりました。主人公は故郷に妻と子がいながら東京にも愛人がいます。やがてその愛人にも子どもができます。そういう状態でいながらどちらも心底愛してるわけではありません。そんな自分勝手な人間の自分勝手な生活を描いた作品です。葛西善蔵がこういう作品を敢えて書いた心境などを考えながら読んで頂ければと思います。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 | HOME | 

FC2Ad

カテゴリー

ブログ内検索

最近の記事

最新コメント

リンク

このブログをリンクに追加する