蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

吉行淳之介 「原色の街」

吉行淳之介という人には不思議な魅力があります。えしぇ蔵もこの人には非常に強い関心を持っています。彼は世の中のあらゆるものに対して、シニカルな眼を通して距離をおいて見ており、何事にも冷めた反応しかしませんでした。感情に左右されることなく、常に”自分”というものを強固に持ち続け泰然自若の姿勢で一生を終えますが、それが冷たい人という印象を残すのではなく、”かっこいい”という印象を人に持たせるから不思議です。彼はルックスもよく、女性に対して敬意を持って接していたので非常にもてたそうですが、おそらくそんなぶれない姿勢が彼の最大の魅力だったのではないでしょうか?それは作品にもしっかり現れています。彼は男女の性をとおして、人間の生を見ようとした人です。女性との接触で何かを見つけようとする、救いを求めようとする男性を描いています。この作品もその一つです。戦後まもない頃の小説というのは戦前の高揚感、戦中の緊張感がともに敗戦によって失われ、プライドも希望もなくした人間がただ生きていくためにどうすればいいか懊悩しつつさまよう姿を描いているものが多く、登場人物の人間性はどこか荒んでいます。そういった人間たちが自暴自棄に愛欲をむさぼりながら、必死に精神的つながりを求めているという姿を描くとすれば、それはまさに彼の得意とするところです。性行為のきわどい描写も彼が書くととても深いものになります。表面的には単なる性欲のやりとりであっても、当事者同士の内面ではお互い何かを探し求めている、何かの答えを探している、そういうふうに受け取ることができます。心理描写が巧みだからそう感じるのかもしれません。冷徹な視線で描いているはずなのに、その裏には必死なものがあるのを感じます。そうしてやはり最後には、作品に対しても”かっこいい”という感慨を持ってしまいます。一冊読めばこの人の作品にはまっていくという人は少なくないと思います。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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