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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

松本清張 「或る「小倉日記」伝」

北九州市小倉の小倉城のすぐ近くに「松本清張記念館」があります。そこに行くと彼の作品の表紙を壁一面にずらりと並べているコーナーがあります。きっと驚かれると思いますがその数は半端じゃありません。生涯においていかにたくさんの作品を残したかを表しています。その数は1000にも及ぶそうです。全作品を読むというのはかなり大変な作業になると思います。それだけたくさんの作品を残しているからにはかなり若い頃から作品を発表していたのではと思われがちですが、実は作家の中でもかなりデビューは遅い方です。この作品は昭和27年の芥川賞受賞作で、彼はこの作品によって一躍メジャーの仲間入りを果たしますが、この時既になんと44歳でした。作家としてはだいぶ遅い出世です。本格的に作家活動に入るのはさらに3年後のことですが、そこからはまさに快進撃です。数々の賞をとりつつ、膨大な作品を残したというわけです。デビューが遅い作家に見られる共通点は、様々な社会経験を経て人間の幅も増しているせいか、初期の作品から既に完成度が高いということです。この作品はその典型的な例です。新人の登竜門「芥川賞」を与えるには逆に完成しすぎているという印象すら受けます。この作品は文学史上における謎の一つ、森鴎外の小倉在住時代の日記の在り処を追う身体障害者の主人公のひたむきな生き様を描いています。幻の日記を探す謎解き的なおもしろさと、主人公が障害と闘いながら強く生きるドラマ性という一見相反するような2つの要素をうまく融合させている点はまさに賞賛すべきテクニックです。全く無駄がなく極めてレベルの高い作品に仕上がっています。この後、怒涛の勢いで名作を発表し続けていくわけですが、この作品は彼の作品歴における大いなる序章と言えると思います。短編ではありますが松本清張の魅力がコンパクトに凝縮された作品ですので、今から松本清張の世界に入りたいという方には是非この作品を最初にして頂ければと思います。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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