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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

太宰治 「富嶽百景」

太宰治のすごさを説明するとすれば必ずこの作品は例として取り上げられます。主人公が富士山をどういうふうに見て、どういう感慨を持ったか、分析するような感じでたんたんと始まる富士山をテーマにしたショートストーリーなんですが、芸術性が高く非常に高品質な文学であることに誰しも気付くでしょう。「富士には、月見草がよく似合ふ」は有名なくだりです。太宰治は一時期、御坂峠の天下茶屋というところに滞在するわけですが、そこから真正面に富士山が見えます。ファンの人はここを訪れるのはお約束です。ではなぜこの御坂峠の天下茶屋に滞在することになったのでしょうか?太宰治の人生を振り返ってみると自殺未遂、心中未遂を繰り返す悲観的なもので、まるで早く死なないといけないという義務でも課されているかのようでした。そして昭和12年に内縁の妻であった小山初代とカルモチンを使って自殺を図りますが失敗し、その影響で1年間執筆活動を休止します。そんな彼を見かねた師匠の井伏鱒二が、彼にこの御坂峠の天下茶屋での静養を勧めます。前述のとおりその茶屋の真正面に富士山が見えていたことがこの作品が生まれたきっかけとなりました。その後、石原美知子と見合い結婚し彼の精神状態も安定してきます。そこからはまさに快進撃です。この作品を筆頭に続々と後世に残る名作を発表していきます。戦後になると時代の寵児となり、新戯作派、無頼派の一人として自らの文壇における位置を確立します。まさに光に満ち溢れた未来が待ち受けているという印象だった彼ですが、昭和23年に玉川上水に身投げして心中します。しかも相手は奥さんではなく愛人の山崎富栄でした。まるで人生にしがみついて必死に生きる人が滑稽に見えたかのように彼は人生をあっさりと捨ててしまいます。そこへ至る真の理由は様々な説があげられていますが真相は玉川上水の水とともに彼岸へと流れていきました。葛藤そのものが人生であったような彼が再起を図ろうとした時に書いたこの作品にはどこかにそのヒントが隠されているのかもしれません。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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