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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

有島武郎 「一房の葡萄」

有島武郎の人生は実に悲しいものでした。子どもは男の子3人に恵まれましたが奥さんに先立たれてしまい、彼は一人で3人を育てます。その後、婦人公論の記者で人妻の波多野秋子と知り合い愛し合うことになりますが、そのことを秋子の夫に知られて悩み苦しみます。そしてついに軽井沢の別荘「浄月荘」で秋子と二人で首をつって心中します。とても真面目な人だったようで倫理観や責任感が強かったからか自らの過ちの重荷に耐え切れなかったようです。結果的には悲しい最期をとげたわけですが、その人生をたどってみると、きっとこの人は人間的にいい人だったのではないかと偲ばれる点が多々あります。彼の優しい人柄の一端を窺い知ることができるのが彼が残した童話です。彼は子どもたちによく童話を読んで聞かせてあげていましたが、当時はなかなかいい作品がなかったそうです。そこで自分で書いてあげたという童話が今8編残っています。その中でも最も有名なのがこの「一房の葡萄」です。主人公の男の子は絵が上手でしたがいい絵の具を持っていませんでした。一方で絵が下手なのにいい絵の具を持っている友達がいて、その子の絵の具がどうしても欲しくなり、とうとう盗んでしまいます。彼が盗んだことはすぐに発覚しますが、そこで先生がいかに主人公を諭すか、盗まれた友達といかにして和解するかがポイントになってきます。タイトルの葡萄は先生が罪悪感に怯えて泣く主人公を慰める時に非常に効果的な小道具として使われています。彼の童話の特徴はあたりさわりのない子ども向けのめでたしめでたしではなく、人生の現実をちらっと教えるような厳しさも少し含んでいるということです。人生ってそんなに甘くないぞと我が子たちに教えたかったんでしょうね。そのへんに彼の人柄と子どもたちへの深い愛情を感じます。現代のお父さん、お母さんに読んでいただきたいですね。そして是非子どもに読み聞かせてあげて欲しいと思います。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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