蔵書

福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

太宰治 「道化の華」

この作品を読んだのは東京にいた頃でした。自分も小説を書きたいと思って真似事をしたりしていましたが、これを読んでかなりのショックを受けて、小説を書くということはとても自分ごときレベルではなし得ないことなのだと痛感させられたのを覚えています。最初の数ページを読んで頂くだけでわかりますが、恐ろしいくらいのハイレベルです。ストーリーが面白いとか、文章が美しいとか、構成がしっかりしているとか、人物描写が巧みとか、そういう次元は超越してもっと先へ行こうとして新たな道を探っている小説という印象を受けます。小説というものに対する一般の既成概念を崩そうと実に果敢に挑戦しています。前衛的であり、実験的であり、抽象的です。例えば人称が入れ替わる点には最初かなり戸惑いを感じます。主人公の大庭葉蔵が「僕は・・・」と語っているかと思いきや、急に「大庭葉蔵は・・・」と視点が変わります。そうかと思えば今度は作者が登場したり、と読み手の視点を定まらせずに物語は進んで行きます。読みながら、あれ?あれ?の連続です。一度でさっと読むことができません。同じ箇所を何度か読み直しながらでないと先に進めません。太宰治に翻弄されっぱなしです。きっと戸惑う読者を思い浮かべてほくそ笑みながら書いたのではないかと思ってしまいます。この作品、もともとは普通の小説として書いたものを後から形を変えていったそうです。普通に描いたデッサンを徐々にデフォルメして抽象絵画を描いていくような感じでしょうか?川端康成や志賀直哉の作品をルノワールやモネやスーラに例えるとすれば、確かにこの作品はピカソ、ミロ、クレー、カンジンスキーの作品を連想させるものがあります。しかもこの作品はデビューの頃に書かれていますからさらに驚きです。いまや伝説となった人の類稀な才能にあなたも触れてみて下さい。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 | HOME | 

FC2Ad

カテゴリー

最近の記事

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

プロフィール

esezo

Author:esezo
FC2ブログへようこそ!

QRコード

QRコード

RSSフィード