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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

泉鏡花 「婦系図」

泉鏡花の作品のイメージは、「高野聖」に代表されるように幻想的、オカルト的なものと受け取られがちですが、全くの大衆文学でドラマのシナリオに持ってこいのような物語もそれは素晴らしいものを残しています。明治の末期に新聞連載されましたが、この時代において尾崎紅葉の「金色夜叉」と徳冨蘆花の「不如帰」とこの「婦系図」は、三大国民的通俗小説といわれました。確かにこの三作品は非常にドラマティックで、ストーリーの展開に心を奪われ、登場人物と一緒に喜び、怒り、悲しむというふうに読者を引きずり込む面白さが特徴です。通俗小説、いわゆる面白さを重視する大衆小説は明治の頃といえど他にもたくさんあったわけですが、この三作品は群を抜いていますのでどれもお勧めです。このような作品が当時の一般大衆を夢中にさせた構図は、あたかも現代において中高年の人が韓国のドラマに夢中になるのに似ているような気がします。韓国のドラマは、もはや日本のドラマでは見られない驚くほど意外な展開で視聴者を夢中にします。そんなこと実際にはありえない話だと思わせつつもテレビの前から離れられないという、強引さを含んだ魅力を持っています。まさにそれこそこの作品の魅力です。主人公の早瀬とお蔦の悲恋を中心に進むストーリーは、信じられないような驚きの展開で読者を振り回します。読み進むうちにどんどん話は盛り上がっていき、最後の留めにはこれまた驚きの結末が待っています。読み出したら止まらない作品です。それほどの面白さがある作品ですからこれまで何度もドラマや舞台で演じられてきました。(ただし舞台でよくやる「湯島境内」の別れの場面は舞台用に後から書き加えられたものなので原作にはありません。)演目としては定番中の定番となっています。ドラマや舞台で見たという人も多いことでしょうが、ここは是非原作を読んで下さい。師匠の尾崎紅葉にひけをとらぬ名文で読めば、物語の深みを味わうことができます。韓国ドラマに負けない面白さを保証しますよ!

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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