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福岡ESEグルメのえしぇ蔵による、日本文学の書評ブログ・・・もどきの読書感想文ブログです。

小川未明 「赤いろうそくと人魚」

小川未明とくれば童話ですね。非常に多くの童話を残しています。まさに日本児童文学の父であり、日本のアンデルセンと呼ばれるにふさわしい人です。師匠は坪内逍遥なんですが、彼が大正15年に今後は童話しか書かないと宣言した理由は師匠に小説家としての才能の限界を指摘されたからという説があります。本人聞いた時はがっくりしたことでしょうが、彼が児童文学で大きな足跡を残したことを思えば師匠の指摘はいい結果を生んだというべきでしょうね。彼はまさにその生涯を童話に捧げます。ただ、その作品の特徴としては多くの子どもに読んでもらうために書いたにしてはちょっとシュールな部分もあり、幻想的な部分もあり、ストーリーよりも芸術性を追っている部分もあり、全体的に大人が読んだほうが楽しめるのではないだろうか?という印象を受けます。実際、えしぇ蔵が読んだ時には、童話というより文章の芸術だなと思いました。一般的な童話というのは子どもに夢を与えると同時に、どこか教訓めいたものが含まれており、子どもの教育に役立たせるための要素があるものですが、小川未明の童話は皮肉な結果に終わったり、ものごとをシュールにとらえる面があったりして、おそらく子どもには訳が分からないのではないかと思える作品もあります。そういう意味で是非大人の人に読んで欲しいと個人的には思います。この作品は人魚が人間の暮らしにあこがれて、あるろうそく売りの老夫婦のもとで暮らす話ですが、この老夫婦は金に目がくらんで、かわいがっていた人魚を売るんですよ。ね?シュールでしょ?さぁ売られた人魚はどうなるのでしょう?芸術的大人向け童話を是非お楽しみ下さい。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

寺田寅彦 「柿の種」

寺田寅彦は人間的に非常に面白い人です。本業は物理学者で、東京帝国大理科大学教授であり、様々な研究結果によって物理学史上に名を残し、その特異な研究は「寺田物理学」と呼ばれるまでになりました。研究の対象は地球物理学のようなスケールの大きなものから、身の周りのなにげない現象にまで多岐にわたっており、そういった面にも彼の人間性の一部を垣間見ることができます。そんな彼のバイタリティは物理学だけにはおさまらず、全く畑違いの文学にまでひろがっていきます。友人でもあり師匠でもある夏目漱石との出会いが彼の文学への目覚めのきっかけでした。そして随筆や俳句などにおいて優れた作品を残しました。随筆のネタの中には物理学のことも頻繁に登場し、文系と理系が仲良く同居した独特の作風は彼ならではのものであり、批評家の間ではその点が高く評価されているようです。この「柿の種」は、俳句雑誌「渋柿」に連載された短文を一冊にまとめたものです。どれもポイントだけにしぼった簡明でかつ内容の濃い短文で、読後に深い余韻を残すものばかりです。テーマにも文章にも心休まる優しさがあり、読者を憩わせてくれます。ちょっと一息つきたい時にぱらぱらっとめくって読むのに最適な作品です。そしてやはり文章の中に知性からくる品を感じます。聡明な印象を受けます。曖昧さがなくきちんとした構成はやはり一つの答えを導くために条件を揃えて証明していく理系的な発想からくるものなのでしょうか?どこか他の作家とは違う明確さのようなものがあります。物理学者の生み出した文学がどういうものか、是非皆さんにも味わって頂きたいです。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

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